1. 労働基準、労働環境など
三菱商事は、時代、時代のニーズを先取り・先読みし、個別事業やその上に成り立つ産業の当事者として、真摯に社会課題解決に挑み、事業活動を通じて社会と共に持続的成長を実現してきました。こうした事業特性を踏まえ、その成長を支えてきた多彩・多才な人材を価値創出の源泉、すなわち「人的資本」として捉え、これまでも、これからも積極的に投資していきます。事業のさらなる多様化・グローバル化に対応し、性別や国籍などにかかわらず、多彩・多才な人材がそれぞれの持つ能力を存分に発揮できる「多様な人材が未来を創る活気に満ちた組織の実現」を目指し、連結・グローバルベースでの人材育成・活躍促進に取り組んでいます。
当社は、世界中でさまざまなビジネスを展開するに当たって、人権への配慮が不可欠であると考え、「役職員行動規範」で、人権を尊重し、差別・ハラスメントを行わないことなどを規定しています。このうち、労働慣行については、ILO国際労働基準※ILO国際労働基準
ILO(国際労働機関)は、「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立することができる」という原則の上に立って1919年に設立されました。設立以来の最も重要な機能の一つは、国際基準として設定した条約および勧告を、三者構成(使用者・労働者・政府)の国際労働総会で採択し、加盟国が批准することでその実施を義務付けることです。また、勧告は政策、立法、慣行の指針となります。ILOは設立以来、働く世界に関わるほとんど全ての事項を網羅する条約と勧告を採択してきました。当社はILOが中核的労働基準として定めている4分野・8条約(下表参照)の全てを支持し、役職員行動規範細則で遵守事項の関連法令として明記しています。※を、役職員行動規範細則で遵守事項の関連法令として明記しています。なお、当社は法定最低賃金を遵守し、同一資格・同一職務レベルにおいてジェンダー間で統一された報酬体系を適用しています。
当社は、2010年に「国連グローバル・コンパクト」に参加しました。国連が提唱する人権、労働基準、環境および腐敗防止の4分野で企業が遵守すべき普遍的原則「グローバル・コンパクト」の支持を宣言し、「三綱領」の精神に基づき、各分野における取り組みを推進しています。
中核的労働基準 4分野・8条約
結社の自由・ 団体交渉権の承認 |
結社の自由及び団結権の保護に関する条約(87号) 団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(98号) |
強制労働の禁止 | 強制労働に関する条約(29号) 強制労働の廃止に関する条約(105号) |
児童労働の禁止 | 就業の最低年齢に関する条約(138号) 最悪の形態の児童労働の禁止及び廃絶のための即時行動に関する条約(182号) |
差別の撤廃 | 同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(100号) 雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(111号) |
1. 労働基準、労働環境など
所管役員 | 柏木 豊(代表取締役常務執行役員、コーポレート担当役員(人事、地域、IT)) |
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審議機関 (経営意思決定機関である社長室会の下部委員会) |
HRD委員会 委員会で審議された労働慣行に関わる重要事項は、社長室会にて機関決定され、所定の基準に基づき、取締役会に付議・報告されています。 |
事務局 | 人事部 |
当社では投融資管理の審査に際し、経済的側面だけでなく、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点を重要視し、労使関係、労務管理状況、労働問題なども確認し、総合的に審議・検討しています。また、新規・撤退案件の審査のみならず、既存事業投資先の事業経営をモニタリングし、改善に資するように努めています。
1. 労働基準、労働環境など
当社にとって最大の資産は「人材」であり、当社では、新卒採用・キャリア採用活動を毎年実施しています。直近の採用実績は以下の通りとなり、昨今の状況も踏まえ、オンラインも活用しながら、日本国内外の大学生・大学院生を対象とした選考を広く実施しています。また適正な選考活動を実施するべく、専門家による研修など、面接委員の教育を毎年実施しております。
また、採用活動に加え、大学生および大学院生へのキャリア教育を目的とした、就業体験型ワークショップを実施しています。
採用実績(単体)は以下リンク先をご参照ください。
当社では、各組織・個人が、自律的に、メリハリのある働き方を目指し、成果・業績の向上を図りつつ、生産性・効率性を高めた働き方の実現に取り組んでいます。
個々の事業環境や対面業界などが異なる中、各組織・個人の自律的な取り組みを尊重しながら、会社全体としても、計画的な休暇取得の促進により、有給休暇取得率70%以上を目指す他、長時間残業の課題がある組織では、個別に改善策を策定・実行しています。その結果、当社単体の2022年度の有給休暇取得率は71.1%、月間平均残業時間は29.2時間/月となりました。
これらの取り組みを通じて、成果に応じた公正な評価がなされる組織風土・文化を育みながら、多様な人材が活躍できる環境をつくっていきます。
当社は、企業行動指針において人権の尊重をうたうとともに、三菱商事役職員行動規範・社会憲章に、「人権の尊重」「差別・ハラスメントの禁止」「人種、肌の色、信条、宗教、性別、性自認、性的指向、国籍、年齢、出身、心身の障害、病気など事由のいかんを問わず差別の禁止」「各国・地域の文化・慣習・言語の尊重」などを明記しています。
「ハラスメント防止の為の基本方針」を策定、広く周知しています。セクハラ、パワハラの他、いわゆるマタハラ(妊娠・出産・育児休業・介護休業などを理由とする不利益取り扱い)や、LGBTなどの性的指向や性自認にかかわらず性的な言動もハラスメントに該当する旨、基本方針に明記しています。
また、社内外に相談窓口を設置し、メール・電話・対面などで、いつでも相談できる体制を整えています。
新入社員全員に対し人権啓発研修を実施する他、毎年全職員にeラーニングを実施しています。
また、部長・リーダー就任時などには、ハラスメントに重点を置いた講義を実施しています。
関連会社に出向する社員に対しても人権研修(強制労働・児童労働の禁止など)を実施するなど、連結ベースでの対応を行っています。
2. 従業員との関わり
当社では、従業員が生き生きと働ける環境づくりを通じて、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上、および会社の業績向上・社会的使命の達成を図るべく、実際に現場で業務に当たる従業員の意見・課題認識を会社経営に反映させるために、「三菱商事従業員組合」との間で、全社レベル・各組織レベルでの各種の対話を行っています。その結果を踏まえて施策の策定・実行を進めています。
当社は、日本国憲法・法令により認められた結社の自由および団体交渉の権利を一貫して尊重しています。1970年に結成された「三菱商事従業員組合(以下、従業員組合)」との間では、ユニオン・ショップ協定を締結しており、管理職相当の資格にある者およびその他業務の性質などを勘案して個別の合意に基づき非組合員とする者を除いた全職員が加入することとなっています。また、事業会社においても、結社の自由および団体交渉の権利を尊重する方針の下で、当該国の法令・労働慣行を遵守・尊重しています。
当社では、労働条件に関する事項をはじめとして、会社と従業員組合との間で団体交渉を要する事項および運営方法を定め、必要な場合には双方で真摯に議論を重ね、理解を深めた上で合意に至るプロセスを整備しています。近年も、報酬・人事制度見直しや年収改定に当たって、会社・従業員組合の間で団体交渉を実施しました。
2. 従業員との関わり
所管役員 | 柏木 豊(代表取締役常務執行役員、コーポレート担当役員(IT、CAO)、チーフ・コンプライアンス・オフィサー、緊急危機対策本部長) |
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審議機関 (経営意思決定機関である社長室会の下部委員会) |
HRD委員会 委員会で審議された労働慣行に関わる重要事項は、社長室会にて機関決定され、所定の基準に基づき、取締役会に付議・報告されています。 |
事務局 | 人事部 |
2024年4月1日時点の従業員組合員数は3,015名(加入率54%)であり、従業員組合と会社との協定に基づき非組合員とされる者(管理職相当の資格にある者、職務の性質上非組合員とすべきと個別に合意した者 など)を除く全職員が加入しています。組合員から選出された執行委員長が代表者を務めています。従業員組合と会社は、「企業の社会的使命を共に認識し、相互に会社の健全なる発展と組合員の経済的、文化的地位の向上をめざし努力することを念願とする。」という基本理念を共有しており、この理念に基づき、従業員組合は各種の活動を行っています。
当社では投融資管理の審査に際し、経済的側面だけでなく、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点を重要視し、労使関係、労務管理状況、労働問題なども確認し、総合的に審議・検討しています。また、新規・撤退案件の審査のみならず、既存事業投資先の事業経営をモニタリングし、改善に資するように努めています。
2. 従業員との関わり
従業員組合と会社は、両者で締結する「会社と組合との基本協定」に基づき「労使懇談会」および「協議会」を開催し、相互の課題認識に関する提案・状況報告・討議などを行い、全社・各組織で業務に当たる職員の意見も反映した適正な事業運営の一助としています。
① 労使懇談会(労懇)
従業員組合と会社が利害を共にする種々の事項に関して、意見交換による相互の意志疎通、会社活性化に向けた組合員の幅広い意見の経営諸施策への反映・会社業績向上への寄与および働きがいのある職場づくりを目指すことを目的とするものです。各営業グループ、本部、部・室単位での労使懇談会が多数実施され、ここでの懇談内容は各組織の運営に生かされるだけでなく、「社長労懇」・「人事担当役員労懇」・「通期業績労懇」・「中間業績労懇」といった、年1回開催される全社的な労使懇談会での報告・討議材料にもなります。
② 協議会
特定の事項に関して、意見交換による相互の意志疎通および会社活性化に向けた組合員の幅広い意見の経営諸施策への反映を目的として実施されるものです。2024年度には3回開催(テーマは評価・報酬、キャリア、DE&Iなど)され、従業員組合から会社側の担当部局に対して、従業員組合内のアンケート・議論に基づく報告・提案が行われ、当社が実行に移した提案事項もあります。
2. 従業員との関わり
従業員組合と会社が締結する「会社と組合との基本協定」において、①労働条件に関する事項、②その他従業員組合と会社が団体交渉を行うことを必要と認めた事項を、団体交渉対象としています。これに基づき、直近では以下の団体交渉を実施しています。
2015年度 | 年収改定(団体交渉3回) |
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2016年度 | なし |
2017年度 | 年収改定(団体交渉1回) |
2018年度 | 人事制度・報酬制度改定(団体交渉4回) |
2019年度 | なし |
2020年度 | 年収改定(団体交渉3回)、スタッフ制度改定(同1回) |
2021年度 | なし |
2022年度 | 年収改定(団体交渉3回) |
2023年度 | 年収改定(団体交渉2回) |
2024年度(9月まで) | 年収改定(団体交渉1回) |
また、「会社と組合との基本協定」およびその他個別の労使協定によって、労働協約に当たる事項を定めており、これらは当社に雇用される全従業員を対象としています。