移行期の低・脱炭素化に資する製品・サービスを提供しながら、温室効果ガスの削減に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献します。
三菱商事は社会における脱炭素化を挑戦すべき重要な経営課題の一つと捉えており、さまざまな分野で事業を通じた脱炭素化を推進しています。このトランスフォーメーションを主導し、成長に「つなげる」ことで、MC Shared Value(共創価値)を創出していきます。
当社は、自社の脱炭素化(2030年度半減(2020年度比)、2050年ネットゼロ)を促進するとともに、中期経営戦略2024期間の3年間で1.2兆円規模のEX関連投資などを通じて、社会の脱炭素化に貢献していきます。
当社では、脱炭素社会の実現に向けて、国内外で再生可能エネルギー事業の取り組みを拡充しています。当社では2030年度に2019年度比で持分発電容量を3.3GWから6.6GWへと倍増させることを目標として、再生可能エネルギー事業に取り組んでいきます。
建設中の資産も含めた足元の持分発電容量は3.9GW(2023年9月末時点)となっています。
当社は、クリーンなエネルギーであることから次世代エネルギーとして普及が期待される水素の社会実装及び水素の輸送・貯蔵手段として優れたアンモニアに着目し、バリューチェーンの「つくる」「はこぶ」「つかう」の各ステージにおいてパートナーと共同検証を進めています。また、電化・水素化が困難とされる航空燃料領域において「持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)」の社会実装を推進しています。
銅を始めとした金属資源は電化・再生可能エネルギーの普及に不可欠であり、カーボンニュートラル社会実現の鍵を握っています。当社は、世界有数の銅埋蔵量を誇る既存資産の内部成長を最優先に、保有権益の買い増し、新規優良資産の取得や、資源回収率向上に繋がる新技術の活用を目指していきます。
パリ協定の目標達成への貢献を目指す当社は、目標達成のためにはCCSおよびCCUが果たす役割が大きいと認識しています。IEAは、1.5℃目標達成のためには、2050年に約15億トンのCO2をCCUSにより削減する必要があるとしており、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)においても、CCUSの果たすべき役割が強調されています。CCUSは、CO2の排出源となる産業から、燃料・化学素材、建築材料などの最終製品を製造する産業まで、複数の産業を跨ぐ領域であることから、あらゆる産業に面している当社の総合力を発揮できる事業機会の一つと認識しています。この事業機会を取り込むべく、当社では、グループ横断型のタスクフォースや連絡会を立ち上げ、CCUSの事業化を推進しています。
地球が最大のステークホルダーであると認識し、生物多様性の維持や自然資本の保全に努めるとともに、環境への負荷を低減しながらサーキュラーエコノミーの実現に取り組みます。
当社のあらゆる事業は生態系が提供するサービスの恩恵により成り立っており、その保全と有効活用は当社が社会と共に持続的な成長を遂げていくに当たって必要不可欠なものだと認識しています。当社は、サーキュラーエコノミーの実現に向け、成長機会を取り込みつつ、地球環境への負荷の軽減に努め、事業に取り組んでいきます。
当社ではサーキュラーエコノミーの実現をEXの取り組みの柱の一つと位置付けています。その実現に向けては、限られた資源を有効に活用し、可能な限り効率よく循環させるための取り組みが不可欠です。当社では、新技術の活用を通じた素材の再資源化、バイオ・カーボンリサイクル、製品リサイクル関連新規事業及び、低・脱炭素社会を支える素材・製品事業などを通じ、環境対応型素材製造事業に取り組んでいきます。
当社は飲料ボトル用PET樹脂製造事業会社であるThai Shinkong Industry Corporation Ltd(タイ新光社)に出資し、循環型PET製造事業に参画しました。2023年6月に新設ラインが稼働開始しています。PET樹脂は優れた透明性やバリア性といった特徴を有し、回収・リサイクルシステムが構築されたリサイクル性の高い単一素材であり、飲料用ボトルや食品用容器、繊維など幅広い用途に使用されています。世界的に循環型社会への移行要請が高まる中、モノマテリアル化(単一素材での使用促進)の進展に伴い需要拡大が期待されるPET樹脂の製造能力拡張、およびケミカルリサイクル技術導入によるリサイクルPET樹脂製造事業への参画を通じて、「自然資本の保全と有効活用」に向けた取り組みを強化していきます。
当社と本田技研工業㈱(以下、Honda)は、脱炭素社会におけるEVの普及拡大を見据え、両社の強みを生かしたサステナブルなビジネスモデルの構築に向けて、日本における事業化検討の覚書を締結しました。今後、EVおよびその車載バッテリーを通じたユーザーの利用価値向上を目指し、以下構想の事業化について協議していきます。
当社が今後も持続的に事業活動を行っていくために、当社事業が自然にどの程度依存し影響を与えているかを把握し、そのリスク・機会を分析した上で、自然への過度な依存や負の影響を最小限にとどめ、さらにはその回復に資する取り組みを実施することが重要であると認識しています。
2022年度から2023年度にかけてTNFDのフレームワークを参考とし、当社事業における自然関連課題に関するトライアル分析を実施しました。今後はトライアル分析で得た知見を個別事業の運営に生かすとともに、引き続きTNFDフレームワークを活用しながら自然関連課題の特定および対応に取り組み、当社グループの持続可能性ならびに企業価値の向上に繋げていきます。
当社の生物多様性の取り組みに関する詳細はこちら。
各国・顧客のニーズに基づく資源・原材料・製品・サービス等の安定供給責任を果たしながら、様々な国・産業における事業を通じ、将来に亘って持続可能な社会と暮らしを実現します。
人々の安定的な生活を支えることは当社の最大の使命の一つであり、事業を通じ、持続可能な形でこの使命を果たしていくことが重要だと考えています。現在の社会システムの営みを維持するために必要な物資・サービスの供給を続けながら、よりサステナブルな未来に移行していくための事業の推進を行って参ります。
人口増、経済発展などにより、引き続き世界のエネルギー需要は増加が見込まれています。今後、電力分野では再生可能エネルギーへの切り替えが進展することが想定される一方で、間欠性や立地条件などの観点から全ての電力を再生可能エネルギーで賄うことは、飛躍的な技術革新を必要としており、増大する世界のエネルギー需要を満たしながらカーボンニュートラル社会を実現するためには、化石燃料の低・脱炭素化が不可欠です。
当社は、オペレーションの効率化、CCUSなどを通じ、天然ガス・LNGバリューチェーン全体のGHG排出量の削減に取り組むとともに、化石燃料の中で相対的に環境負荷が低く、移行期を支えるエネルギーである天然ガス・LNGの安定供給責任を果たしていきます。
当社がオペレーターであるbpと推進するインドネシア西パプア州タングーLNGプロジェクトは、インドネシアで生産される天然ガスの20%を占める同国内最大のガス生産プロジェクトであり、2009年の操業開始以降インドネシアや日本をはじめとしたグローバル市場に1,500カーゴ超を安定的に供給しています。2023年10月には、第3液化系列の増設により、年間380万トンのLNG生産能力が既存の2系列(生産能力:年間760万トン)に新たに加わり、タングーLNGプロジェクトにおけるLNGの生産能力は合計で年間1,140万トンに増加しました。
また、2021年にSKK Migas(インドネシア石油ガス上流事業監督執行機関)から承認された開発計画に基づき、現在CCUS事業を含む開発を検討しています。今後タングーLNGプロジェクトに携わる企業連合による最終投資決定を経て、当該CCUS事業実施により天然ガスの生産に伴い排出されるCO2を最大90%削減、タングーLNGプロジェクト全体で排出されるCO2を約半分削減することが見込まれ、世界屈指のGHG排出量の少ないLNGプラントとなることが期待されます。
鉄鋼は代替困難な基礎素材であることから、その需要は世界経済の成長に合わせて長期的に堅調に増加していくことが想定されています。鉄鋼業では、鉄鉱石を主原料とする製鉄プロセス(高炉法)において多くのGHGを排出するため、鉄スクラップを主原料とする電炉の拡大や、将来的には製鉄プロセスでの水素利用が期待されていますが、そのために必要な技術的革新や生産設備の切り替えが実現するには相応の時間を要することが想定されるため、当面は現在主流である高炉製鉄プロセスの脱炭素化が重要な課題となります。当社の主要商品である高品位原料炭は、高炉製鉄プロセスの原料の一つとして、既存高炉の低炭素化に貢献することから、引き続き需要家に対して高品位原料炭の安定供給責任を果たし、鉄鋼産業の低炭素化へ寄与してまいります。
金属資源の探査・開発・生産・販売を行うオーストラリアMitsubishi Development Pty(MDP)社は、パートナーであるBHP社と共に、年間生産量約60百万トン、海上貿易量の約3割のシェアを持つ世界最大規模のBMA原料炭事業を運営しています。BMAでは高炉製鉄プロセスの低炭素化に貢献する高品質な原料炭を供給しています。2023年10月には、一部炭鉱の売却に合意し、高品位炭鉱への更なる集約を進めています。
また、事業環境の変化を見据え、BMAの生産プロセスで排出されるGHG削減に取り組むとともに、原料炭事業のパートナーであるBHP社と共同で、原料炭バリューチェーン全体での排出量削減に資する研究支援に取り組んでいます。2022年10月にはアルセロール・ミタル社、三菱重工エンジニアリング㈱、BHP社と共に製鉄分野でのCO2回収適用に関し協業契約を締結し、今後、アルセロール・ミタル社が保有する製鉄所でのCO2回収技術適用の実証試験などを共同で実施します。
世界人口の増加などによる食料需要の拡大や、サステナビリティに対する関心の高まりを背景に、持続可能な生産・供給体制の構築は重要度が増しています。当社では、生産から加工・販売に至る食料バリューチェーンのサステナブル化を目指し、MSC/ASCをはじめとする漁業/養殖業に対する国際的な認証商品の取扱い強化や、「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」遵守サプライヤーとの取引を推進しております。
当社は、2014年にノルウェー、チリ、カナダの3カ国で年間約20万トンのサーモンを養殖する養殖・加工・販売会社であるCermaq社を子会社化しました。当社における養殖サーモンの生産量は世界有数となっており、持続可能で安全・安心な養殖サーモンを世界中に供給しています。
Cermaq社は、事業を展開しているすべての国で、生物多様性の保全を操業に当たって欠かせない取り組みとして位置づけています。天然サーモンが生息するすべての地域において、地元の関係者と協力しながら生態系の保全に努めている他、事業を展開する国の法令やASC認証で定められている基準に沿って、養殖海域のゴミの除去や鳥や海獣の死亡数調査などを行っています。また、飼料調達方針として、IUU(違法、無報告、無規則)漁業に由来する魚粉や魚油を使用しないことを定めています。
イノベーションがもたらす産業の大きな変化も取り込みながら、社会課題の解決に資するビジネスを創出していきます。
イノベーションは社会や産業の課題を解決し、人々の生活をより豊かにする大きな可能性を秘めたものだと認識しています。イノベーションが創出するビジネス機会にアプローチしながら、既存の事業をダイナミックに変革していくことで当社の持続的な成長を実現していきます。
当社にはDXによる課題解決が必要となるリアルな事業現場が数多く存在します。これらの事業現場に対してDX機能を提供することで物流最適化や生産性向上を実現し、事業の価値を向上させて、産業全体の発展と豊かな地域社会の実現に貢献していきます。
当社が有する幅広い事業知見を生かした産業横断型DX機能を開発し、サービスとして提供することで、産業自体の価値向上に貢献するとともに、産業・企業・地域コミュニティなどが有機的につながり、共存・共生できる「産業横断型デジタルエコシステム」の構築により、産業・社会全体の生産性向上を実現し、持続可能な価値創造を目指します。
2023年度は、100件を超えるDX案件から注力案件の絞り込みを行っており、今後の更なる案件開発・実現を加速させていきます。
エムシーデジタルは「テクノロジーでビジネスモデルをアップデートする」ことをミッションに掲げています。当社は幅広い産業にて事業を展開していますが、中には先端IT技術の活用によりさらなる付加価値化が図れる領域もあります。MCデジタルは、当社が手掛ける全産業をフィールドに、AIをはじめとする最新のテクノロジーをもって革新的に課題を解決します。また、海外のイノベーション・エコシステム、学術機関・行政機関との提携や、新規事業開発に取り組み、多方面に向けたソリューションを提供してまいります。
日本における食品ロスは570万t(2019年)と試算されており、その食品廃棄規模はWFP※WFP:World Food Programme(国際連合世界食糧計画)の略。※の世界食糧援助量(2020年)の約1.4倍に相当します。また、日本における食品ロスのうち、食品の流通・生産の過程にて廃棄される事業系食品ロスは全体の約54%を占めており、食品流通業界として解決すべき重要な課題として認識されています。
当社はこのような食品流通の課題に対して、AIなどのデジタル技術を用いて食品ロスを削減する取り組みを進めています。一部事業投資先企業においては、流通効率化をはじめとする取り組みを通じて、2030年までに食品ロスを50%削減する目標を掲げています。
当社では、食品卸における需要予測・発注自動化を実現するソリューションの開発に着手しています。食品卸の在庫量を削減しつつ、欠品も生じさせない適切な発注量をAIを用いて自動計算し実発注につなげることで、「必要なモノを、必要なだけ仕入れる」ことが可能になり、食品卸における食品ロスの削減に貢献することができます。実証実験においては、従来の人手による発注業務と比較し、欠品率を低減させながら、在庫量を低減できる結果が得られており、十分な効果を発揮できると見込んでいます。
今後は、現在開発中のソリューションを食品卸業界全体へ普及させることで、食品卸業界における食品ロスの削減に貢献するとともに、食品メーカーや食品小売向けへのソリューション提供を通じて、食品流通バリューチェーン全体における、流通の最適化および食品ロスの削減を目指します。
食品流通事業の中核を担う三菱食品では、AIによる需要予測を活用した在庫最適化ソリューションを全てのローソン向け専用センターに対し導入を完了するとともに、2030年食品廃棄量の2016年度比50%削減を目指しています。
生産者から消費者をつなぐサプライチェーンは、保管と輸送を組み合わせた物流機能で成り立っています。その要所を成す国内倉庫市場は約7兆円の市場規模を有しますが、人手不足や属人化、長期契約によってそのキャパシティが固定化し、多様な産業のビジネスシーンでムリ・ムダ・ムラが発生する一因となっています。米国や中国などをはじめ、世界的にも同様の課題に直面しており、自律走行が可能な倉庫ロボットの開発や倉庫の空きスペースのシェアリングといった新しいビジネスモデルの普及が進んでいます。
Gaussyは倉庫現場の人手不足や属人化といった課題に対して、誰でも簡単にロボットを使って倉庫運営ができるサブスクリプション型の倉庫ロボットサービス“Roboware”と、倉庫キャパシティの過不足といった課題に対して、誰でも簡単に倉庫空きスペースを利用できるシェアリング倉庫サービス “WareX”の2つのサービスを提供しています。“Roboware”は6機種の倉庫ロボットを取り扱い、全国25拠点以上に導入されています。“WareX”は2023年12月末時点で全国1,400拠点を超える倉庫が登録されており、遊休スペースを活用した従量課金型の倉庫として、大手から中小企業の皆様にご利用いただいいています。
Gaussyでは「物流から新しいチャンスを」をビジョンに、倉庫ニーズや荷量の変化にフレキシブルに対応できる仕組みを構築し、ビジネスに今までにない新しい選択肢を提供していきます。
低・脱炭素化の推進は地球規模での喫緊の課題であり、スピード感をもってこれに取り組む必要があります。そのためには、全く新しい脱炭素技術の開発のみならず、すでにR&Dを終えた技術を早期に社会実装へと移行させる、スケールアップ段階におけるイノベーションが重要となります。
当社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、すでに次世代エネルギーなどのEX関連事業開発も推進していますが、これらの取り組みを補完し、さらに加速させるべく、官民連携を通じて革新的な脱炭素技術のスケールアップにも取り組んでいきます。
当社は、革新的な脱炭素技術の社会実装を加速させるBreakthrough Energy Catalyst(ブレイクスルーエナジーカタリスト、以下、BEC)にアジア域内の企業として初めて参画致しました。
BECは、世界的な篤志家であるビル・ゲイツ氏が2015年に設立したBreakthrough Energyが新たに開始した取り組みであり、研究開発を終えた脱炭素新技術を用いた個別プロジェクトに対して投資などの支援を行います。
当社は、再生エネルギー事業や水素・アンモニア・メタネーションなどを活用した次世代エネルギーの導入検討などに着手しておりますが、全世界的な課題であるカーボンニュートラル社会への移行・実現には、新技術の活用とイノベーションが必要不可欠と認識しております。
BECは、民間企業・慈善団体からの資金供給に加え、グリーン製品需要家による製品引取支援、さらには政府機関からの支援を有機的に結び付ける“Catalyst(触媒)”となり、カーボンニュートラル社会を実現するために必要な商業化直前の革新的な脱炭素技術を用いたスケールアップ・プロジェクトを支援する枠組みを構築しています。
注力分野は、①クリーン水素製造(及び水素関連インフラ)、②長期エネルギー貯蔵(Long Duration Energy Storage)、③持続可能航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)、④直接空気回収(Direct Air Capture)及び⑤グリーン製造業(製鉄、セメント、プラスチックなど)の5分野であり、将来的には脱炭素化に重要なその他技術にも対象領域を拡張していく事を想定しています。これらの対象領域は、当社が進めるEX戦略、および「カーボンニュートラル社会へのロードマップ」を具体化させていく上で極めて重要な領域です。
当社は、BECへの参画を通じ、カーボンニュートラル社会への移行・実現を支える技術革新の普通を支援し、人々の暮らしへの安心を損なうことなく、環境負荷の更なる軽減を実現したいと考えております。
当社が有する日本・アジア地域での知見やネットワークを最大限活用し、鉄鋼・航空・金融など幅広い分野における他の参画企業と共に、カーボンニュートラル社会への移行・実現に貢献してまいります。
各国・地域が直面する課題の解決に事業を通じて貢献し、経済や社会の発展に寄与するとともに、多様なステークホルダー、地域・コミュニティとの共生・共創を図ります。
当社は、自社の強みである様々な産業とのつながり・総合力を生かし、多様なステークホルダー、地域・コミュニティとつながることで、大きな価値創出が可能だと考えています。地域が直面する課題の解決を核に、周辺ビジネスにもアプローチすることで地域社会と共に持続的な成長を実現していきます。
当社は2022年5月に公表した「中期経営戦略2024」において、「エネルギー・トランスフォーメーション(EX)とデジタル・トランスフォーメーション(DX)の一体推進による地域創生」を成長戦略に掲げました。脱炭素社会への円滑な移行を通じたカーボンニュートラル新産業の創出や人々が集う魅力あるコミュニティの構築など、地域創生に向けた具体策を全社で推進するべく、各地での取り組みに着手しています。
当社は、2022年11月、一般海域では国内初となる着床式洋上風力発電事業者として選定された秋田地区及び銚子地区に35年ぶりとなる国内支店を新設しました。当社は、再生可能エネルギーなどの地域エネルギー資源の活用、カーボンニュートラル新産業の創出、地域課題の解決を通じた魅力ある街づくりをテーマとし、当社ならではの産業接地面の広さを生かしつつ、パートナーや自治体などの様々なステークホルダーの皆さまとの協働を通じて社会・産業課題の解決に貢献するなど、新産業創出と地域創生による未来創造に取り組む方針です。秋田地区及び銚子地区はその先例となる地域であり、今後30年超にわたって洋上風力発電事業を展開する電力事業子会社及び洋上風力発電プロジェクト会社とも密に連携しながら、洋上風力に留まらない、当社の目指すEXとDXの一体推進による地域創生の具体化を進めていきます。
当社は、地域課題の解決や地域振興・地域創生に向けた取り組みを推進することを目的に2023年までに熊本県八代市、岡山県倉敷市、栃木県那須塩原市、千葉県銚子市、北海道千歳市の5都市と連携協定を締結しました。具体的な連携項目は、デジタル技術を活用した地域及び地域コミュニティの活性化、エネルギー、モビリティ、健康などの市民の生活サービスの向上など、多岐にわたります。那須塩原市では、以下の2サービスについて導入を開始しています。
① 地域ポータルアプリ:地域コミュニティの情報を一元管理するアプリ。具体的には学校や町内会などの連絡、並びに市役所からの広報情報などをデジタルで一括管理し、日々の生活に必要な情報が詰まったアプリを提供。現在、市役所の情報配信業務効率化、ユーザーが欲しい情報を受け取れるように生成AIを活用した広報作成システムを構築中。
② 地域データ連携基盤:那須塩原市が導入する各サービスのデータ連携を「セキュア」且つ「汎用性の高い仕組み」で実現することが可能な基盤を提供。また、各サービスのIDをマイナンバーカードと連携した共通IDの仕組みで統合。
新興国を中心に、中間層の爆発的な拡大、および急速な都市化の進展に伴う社会基盤整備ニーズが高まるとともに、社会価値・環境価値に配慮した都市開発・運営が求められています。
当社は、このような外部環境変化の中で、大規模で付加価値の高い複合都市開発・運営の推進により、良質な住環境、就労・医療・教育・物流・移動環境などを持続的に創出し、当該国の経済成長に寄与しつつ、環境負荷低減に貢献することを目指しています。
当社は、インドネシアにて、同国の不動産デベロッパー最大手の1社であるSinar Mas Land(以下、SML)と共同で、都市運営事業の検討、並びに大規模複合都市開発案件を推進しています。
当社は、SMLと2020年3月に基本合意書を締結し、BSD City(6,000ha)における都市運営及びスマート/デジタルサービス(都市サービス)導入における協業検討を開始しました。SMLと協業の上、AI/IoTデータプラットフォームや都市ポータル、モビリティ、エネルギー関連コンテンツなどを始めとした、BSD City全体を対象とした都市サービス導入を当社グループ企業や各事業分野でのパートナーとも連携して進めております。
MOU締結後、インドネシア初となる電気自動車による自動運転のオペレーションの実証実験を始め、モノを”買う“から”借りる“ことへ行動変容を促すシェアリングサービスの実証実験、直近では電気自動車を使用したBSD Cityにおける移動式コンビニエンスストアのオペレーションなど多数の都市サービスの実証や導入を行っており、地域の社会課題を解決すると同時に都市のサステナビリティを向上させる取り組みを行っています。
また同時に、同エリアにおいて、100ha超の新規開発用地に対して、インドネシア初となる公共交通指向型開発(Transit Oriented Development※公共交通機関に基盤を置き、自動車に依存しない社会を目指した都市開発。※)をコンセプトとした、住宅・商業施設・学校・病院・公園・交通結節点などの都市機能を組み合わせた大規模開発もSMLと共同で展開しています。
公共交通機関の拡充や利用促進に向けたモーダルシフトを促し、交通渋滞などの社会課題や大気汚染などの環境問題の解決に繋げるなど、経済面のみならず、環境・社会性面へ貢献していくとともに、AI/IoTデータプラットフォームや都市ポータル、モビリティ、エネルギー関連コンテンツなどの都市サービス導入を通じて、便利で安全・安心な街づくりを目指します。
過疎化が進む地域社会においては、交通の合理化の観点からオンデマンド交通の必要性が高まっており、デジタル技術を活用したサービスの普及が求められています。当社は、長年培ってきた機能と地域密着型ネットワークといった事業基盤をさらに強化し、モビリティ・サービス事業を通じて社会課題の解決に取り組み、さらなる導入先拡大を目指します。
当社は、西日本鉄道㈱との共同出資先であるネクスト・モビリティ社や塩尻市などとのコンソーシアムを通じて、経済産業省「地域新MaaS創出推進事業」で選定された「自動走行を活用したMaaS」実証事業を開始しました。また、現在は実証事業の効果が確認できたことを踏まえ、本格運行への移行と一部エリアを拡張し運行しています。
塩尻市は鉄道を除く唯一の公共交通としてコミュニティバスを運営しておりますが、バス運転手の担い手不足、運行本数の不足などの課題に直面しています。また、市人口約6.7万人に対し65歳以上は約28%と高齢化が進んでいることもあり、地域のニーズに即した移動手段の拡充が求められています。
斯かるニーズを捉え、当社が参画するコンソーシアムは、本件を推進することにより、塩尻市の交通課題解決に向けて取り組んで参ります。
様々な国で多様な事業を推進する上で携わるすべてのステークホルダーの人権を尊重し、各国の情勢も踏まえながら、バリューチェーン上の課題解決を追求します。
事業に取り組むことで関与するあらゆる人々の人権の尊重なくして、持続的なビジネスや企業価値は創出し得ません。当社は事業推進に当たって人権を尊重することはもちろんのこと、そのプロセスがプラスの価値を創出するような事業の実現にも取り組んでいきます。
当社は、トレーディング事業のみならず、さまざまなパートナーなどと共に世界各地で展開する開発・生産・製造事業を通じて多岐に亘る商品・サービスを取り扱っており、手掛ける事業が人権・環境面でもたらす影響を特定・分析し、これが負の側面を持つ場合はそれを回避・軽減していくことが重要であると考えています。この考えに基づき、当社は、事業における人権・環境デューデリジェンスを推進していく方針です。
当社の人権に関する取り組みの詳細はこちら。
当社は、持続可能なサプライチェーン・マネジメントの観点から、2016年度および2020年度に外部有識者やコンサルタントと協業し、当社が取り扱う商材の中で環境・社会性面のリスクが高い商材を「調査対象商材」として特定しました。その上で、これら商材のサプライヤーを対象として、当社の「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」の遵守状況を調査するサプライチェーン上の人権・環境デューデリジェンス(「持続可能なサプライチェーン調査」)を毎年度実施しています。また、当社では必要に応じた商材ごとの個別の調達ガイドラインの策定も行っており、2024年1月には新たに大豆に係る調達ガイドラインを策定しました。
当社の100%子会社である三菱商事ファッションにおいては、アパレル商材に関するサステナビリティ調達の拡充に取り組んでおり、「持続可能なサプライチェーン調査」を踏まえてサプライヤーとのコミュニケーション・対話を強化し、健全なサプライチェーンの構築を推進しています。
当社グループ企業(以下、当社グループ)では、世界中で約8万名の社員が働いており、社員も最も重要なステークホルダーの一部です。当社グループがこれからも持続的に企業価値を創出するには、事業のさらなる多様化・グローバル化に対応し、性別や国籍などにかかわらず、多様な人材がそれぞれの持つ能力を存分に発揮することが必要であり、その大前提となるのは職場の安全という人権の基盤になる環境整備だと考えています。
具体的な取り組み内容、および進捗につきましては、こちらをご覧ください。
人材が最大の資産である事業特性を踏まえ、組織全体で三価値同時実現の原動力となる多彩で多才な人材を育成し、また多様な人材が価値観を共有し、つながりながら切磋琢磨し成長できる組織の実現に取り組みます。
当社にとって人材は最大の資産であり、価値創出の源泉です。変化の激しい事業環境下においても「多彩・多才な人材がつながりながら、やりがいと誇りを持って、社会や産業の課題解決に挑む会社」であり続けるために、このたび、10年後を見据えたMC HR Vision 「DEAR(多彩・多才な人材を活かし、育て、報いる)」を定めました。このビジョンの下、中経2024において掲げた、人事の重点テーマ、人材戦略:多様な経験の付与を通じた「MCSVの創出に貢献する人材」の戦略的育成、エンゲージメント強化:MCSV創出に向けた組織風土醸成・働く環境整備に沿った各種施策を策定、推進しています。
MC HR Vision 「DEAR」、及び人材戦略やエンゲージメント強化についてのアクションプランは、統合報告書、並びにサステナビリティ・ウェブサイトの各ページもご参照ください。
<人材戦略:多様な経験の付与を通じた「MCSV創出に貢献する人材」の戦略的育成>
<エンゲージメント強化:MCSV創出に向けた組織風土醸成・環境整備>
また、 エンゲージメントの更なる強化に向け、社員のモチベーションや組織の活性度を定点観測し、運営改善などにつなげることを目的として「組織風土調査」を毎年実施、同調査における「社員エンゲージメント度数」と「社員を活かす環境度数」をKPIとして設定しています。また、調査の結果については、各所属員へフィードバックし、自組織の活性化に向けて活用する他、経営レベルでも結果について分析・討議の上、全社として取り組むべき課題を抽出し、施策に反映しています。
事業環境の変化に迅速に対応しながら、連結・グローバルベースで実効性のあるガバナンスを実現し、透明性と柔軟性を備えた健全な組織の維持・強化に努めます。
これまでになく変化の激しい時代の中で、世の中を複眼的に捉えながらその変化に対応する機動力を有することは持続可能な成長には不可欠です。また、持続可能な成長のために必須である経営の健全性、透明性、効率性を確保する基盤として、コーポレート・ガバナンスの継続的強化を行うことは経営上の重要課題だと考えています。これらの観点からの当社の代表的な取り組みは以下の通りです。
当社はあらゆる地域・産業にまたがり事業を行う中で、グローバルネットワークに基づく「インテリジェンス」「産業知見」などの無形資産を組織として蓄積してきました。本店・拠点・事業会社が効率的・効果的な役割分担を通じ、常に連携しながら、変化への対応力を高め、次なる大きな成長を生み出すためのネットワークを構築しています。
当社は長年の歴史で培ったグローバルなネットワークにより、マクロ経済、産業、地政学などの多面的なインテリジェンスやノウハウを有しており、これらの多様なインテリジェンスをつなぎ、外部環境への対応力をさらに強化すべく、2022年にグローバルインテリジェンス委員会(GI委員会)を新設しました。全社戦略に、GI委員会の分析を反映することで、営業グループの推進力と業界を超えた連携を強化していきます。
当社は、これまでも時代の変化に合わせてその生業、体制を柔軟に変化させてきました。激動の時代にあって、その必要性はいつになく高まり、企業には更なる機動性が求められています。事業環境や経営戦略の変移に即応し、共創価値を創出していくために人材と共に組織としても柔軟に形を変えていきます。
当社は、2022年5月に「中期経営戦略2024」(中経2024)を発表しました。中経2024では、当社グループの総合力強化による社会課題の解決を通じ、継続的に生み出されるスケールのある共創価値、すなわち、MC Shared Value(MCSV)の創出を目標に掲げ、EX戦略・DX戦略・未来創造(新産業創出/地域創生)からなる成長戦略を推進し、各営業グループの推進力強化と、業界の垣根を超えた産業横断型の事業開発に取り組んできました。
その結果、
と考えるに至りました。
こうした背景から、2023年12月に、事業戦略・テーマに沿って最適な推進体制を再構築し、よりスケールのあるMCSVを創出できる体制に変更することを発表しました。また、コーポレートスタッフ部門・国内外拠点についても機能強化を図りました。
詳細は、「2024年度組織改編について」をご覧ください。
当社はこれからも時々刻々と変化する外部環境に合わせて、最適な形に組織を変化させていきます。
取締役会は、以下の役割・責務を果たし、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定、実効性の高い経営監督の実現を図ります。
当社は、2000年代よりコーポレートガバナンス改革を推し進め、変化を先取り、事業を変革・強化しながら成長を推進する経営・業務執行を実現すべく、取締役会における充実した審議による実効性の高い監督を発展させつつ、企業価値の向上に努めてまいりました。
「監査役会設置会社」の機関設計において継続的にコーポレートガバナンスの機能を高めてきた中、加速する外部環境の変化への対応力を一層強化し、更なる発展を遂げるため、当社は本年6月に、監査等委員会設置会社に移行しました。これにより、権限委譲を通じて意思決定の更なる迅速化を図るとともに、取締役会における経営方針・経営戦略を中心とした審議を一段と充実させることで取締役会の監督機能を強化・高度化し、企業価値の向上に取り組んでいます。
取締役(監査等委員である取締役を除く)及び監査等委員である取締役による経営監督・監査機能が十分に発揮されるよう、取締役室及び監査等委員会室を設置し、職務遂行に必要な情報及び支援を適切かつタイムリーに提供しています。具体的には、取締役会での本質的な審議に資するよう、毎回の取締役会に先立ち、各グループの経営幹部から社外役員に対し、担当議題の概要を説明する機会を設けています。また、説明会の場を利用して、審議の充実化に寄与する情報も適時適切に共有しています。その他、就任時オリエンテーション、毎年の事業会社視察や経営執行責任者との対話、各グループCEO・本部長などとの対話、常務執行役員との少人数での意見交換会、中堅・若手社員との対話機会など、当社の事業や戦略に対する理解を深める機会を継続的に提供しています。
また、取締役会の監督機能を強化するため、取締役会の諮問機関として、独立した社外の委員を主要な構成員とする、コーポレートガバナンス・指名委員会、報酬委員会、及び国際諮問委員会の3つの委員会を設置し、社外の委員の意見・助言も踏まえた審議を行っています。 コーポレートガバナンス・指名委員会は、コーポレートガバナンスの継続的な強化を図るとともに、取締役会による指名プロセスについてより客観性・透明性を高め、公正性を担保することを目的として、コーポレートガバナンスに係る基本方針及び枠組み、取締役の選解任に関する事項、並びに指名などに関する事項に関し、審議・モニタリングを行います。社長選任プロセスにおいては、丁寧な審議を重ね、諮問委員会以外の場においても、複数回に亘り、社外取締役との意見交換を実施し、社長を選任しています。
報酬委員会は、取締役会による役員報酬などの決定方針や報酬などの額の決定について、より客観性・透明性を高め、公正性を担保することを目的として、役員報酬などの基本的な考え方、執行役員報酬のサステナビリティ項目評価、及び社長業績評価に関し、審議・モニタリング・決定を行っています。
国際諮問委員会は、取締役会の審議に国際的かつ社外の多様な視点を取り入れることにより、各ステークホルダーの意見を経営に反映する体制を整えることを目的として、委員会における討議を踏まえ、国際的視点に立った提言・助言を取締役会に対して行っています。